奄美で素潜り漁師生活④
7がつ11にち、てんき はれ。
ダイツベの奄美遠征での突行も、残すところあと一回となりました。
しかし、ダイツベの銛の原動力であるゴムは切れたままです。替えのゴムはありません。持ってきていません。もうこれを引き続き使うしかないのです。
でも、そんな銛でも戦える方法が一つだけあります。そう、それは奇しくも、これから予定している「ナイトダイブ」が、まさにその方法なのです。
実は夜の魚は眠っていて、動きが極端に鈍くなるとのことでして、それならば飛ばない銛でも充分に戦えるだろうということです。そういうことで、ダイツベは今の銛のまま、奄美最後の決戦に挑むことと相成りました。
ちなみにダイツベ、ナイトダイブは今回が初めてです。そう、初めての夜です。どきどきです。はたして天井のシミを数えている間に終わるのでしょうか。
――そしてとうとう、夜の海。
意外なほどにも、全く怖くはありませんでした。4人の仲間がそばにいるから。また、透明度がよくて、照らした場所がそのまま見えるから、と初めての夜としては最高の環境が揃っていました。
これからいったい、どんなお魚さんに会えるのでしょうか。
などと思っていたら、泳ぎ始めて即、大島軍しょうくんが良型のアカマダラハタとやらを仕留めました。
これには一気にダイツベの闘争心にも火が付きます!
しかし、しょうくんが獲ったような良型のハタは探してもなかなか見つかりません。それを知っていたからしょうくんは、見つけてすぐ水中カメラを回すこともなく、獲りに行ったとのことです。そう、彼はユーチューバーである前に立派な一人の漁師なのでした。
はてさてこのナイトダイブですが、ダイツベが難しいなと思った点の一つに「ライトで片手がふさがる」というのがあります。(手の甲に固定できるグローブをもってきていません)
ヤミハタという、全長20センチほどにしかならない小型のハタもいましたが、真上から狙いに行ったとき、どうも態勢が安定せず、その小さな頭部を狙い撃つことができませんでした。
でも、よくよく考えると、昼間と違って寝ている魚にはどこまでも近付けます。なのでわざわざ真上から行かずとも、いつものようにちゃんと着底して際まで寄って撃てばいいと気付きました。
そうして狙い撃ちしたナイトダイブ初の獲物が「ヒメジ」で、いわゆる「オジサン」で、奄美では「カタヤス」と呼ばれる魚でした。その後も初魚種「ツノマル(テングハギ)」などを仕留めながら、ダイツベの行軍は続きます。
そんな折、ふと前を行く大島軍せいやくんが、ライトで僕の顔を照らしてきました。
ナイトダイブにおける意思伝達の方法として、何か伝えたいことがあるときは相手の顔を照らす、というのを潜る前に聞いていました。どうやら僕に何か伝えたいことがあるようです。
せいやくんの方を注視していると、何やら彼は海底を照らし始めます。照らされた先には、死んだ色をしたサンゴが並んでいます。
「何かいる」ということでしょう。
ダイツベは潜行して、照らされた場所を真横から見てみます。するとどうでしょう。そこには、沖縄三大高級魚に数えられる「マクブ(シロクラベラ)」が、死んだサンゴの陰で休んでいるではありませんか。
どうやらせいやくんは、これを突けと言っているようです。
おいおい、マジかよ。仲間から譲られた獲物を外したとあっちゃあ、情けないの極みだぜ。と思いながらも、なんとか一突き。無事、せいやくんのアシストを無駄にはせずに済みました。
そうして長い夜のロングスイムはその後も続き、やがてGoproの電源も切れましたが、僕らは獲物を獲り続けました――。
奄美最後の漁を終え、海から上がったとき、星空を見上げたりなんかもしました。そしてそのときに、
「チームって、いいね」
とか、なんかとか、臭いことをせいやくんに言った気がします。
漁港に帰ったあとは、コラボ企画が決まってからずっとダイツベが言っていた「大島軍と上島軍がしたい」というきっての希望を叶えるべく、夜の漁港に「押すなよ、押すなよ、絶対に押すなよ」の声が響き渡りました。
それが僕の奄美、最後の夜でした。
この日の動画はこちらになります。